エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
『北斗もたまには顔を見せなさいね。いつもいつも、仕事が忙しいって全然帰ってこないんだから』

「次からは『妻と過ごすのに忙しい』を理由に使わせてもらうか」

 呆れた様子の母に笑い、『じゃあ、また』と電話を切る。

 ようやく冬を終え、暖かくなり始めた風が頬を撫でていった。

 俺の心の長い冬もやっと終わるらしいと、苦笑しながらスマホをしまう。

 五年前に迎えているはずだった純美との結婚生活は、果たしてどんなものになるだろう。

「……まずは五年分、愛してやらないとな」

 会えなかった時間の長さを思いながら、空を見上げる。

 こんな焦れた思いにさせたことへの仕返しだというなら、確かにこれからの結婚生活は『復讐』と呼べるのかもしれなかった。

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