エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 これでもコンシェルジュとしてお客様に失礼がないよう、スキンケアや化粧品に気を遣っているのに、どうやら今日の忙しさには勝てなかったようだ。

 さらに言うと、鏡の中の私はなんだか疲れた顔をしていた。

 もともと肌は白いほうだけど、血色が悪く見えるくらい色白になっている。

 焦げ茶色の瞳にもいまいち生気がなく、今朝からの数時間でどれだけ消耗したのかが窺えた。

 いつもなら自然に浮かぶお客様用の笑顔も、今は意識しなければ作れない。そればかりか、口もとが妙に引きつって頬が痛い。

「笑いすぎて顔が痛いなんて、それでも一流ホテルのコンシェルジュなの?」

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