『絶食男子、解禁』
*
「つぐみ、おはよ」
「おはよう」
会社の最寄り駅で同期の瞳に会い、一緒に会社へと向かう。
「髪、いい感じになってる」
「そう?」
「うん。カラーもしてくれば良かったのに」
「それも考えたんだけど、今度にしようかと思って」
夏の初めなら少し明るめにしようかと思うけど、もう十月になろうとしている。
秋服はお洒落なものが多いけれど、あっという間に冬になるから、明るくすると髪だけ取り残されそうな気がして。
自分に合う色もいまいち分かってないし、結局踏みとどまったというのが正しい。
「つぐみって、ホント安全地帯しか歩かないよね」
「え?」
「石橋叩いて渡るっていうか。元彼のこともあってだと思うけどさ、二十代なんてあっという間なんだから、もう少し危険犯して冒険したっていいと思うんだけど」
「………言いたいことは分かるよ」
昔は当たって砕けろみたいな心構えで何でもトライできた。
勉強にしたって、やるだけやってダメなら次があるさ!的なポジティブ思考だったし。
だけど、二十代後半になって、少しずつ人生の折り返し地点を見据えて来ると、その勢いも半減してゆく。
派手すぎない服に落ち着いた色目のヘアカラー。
凝ったネイルでなく、仕事に支障をきたさないシンプルなもの。
メイク一つとっても、流行の色目ではなく、王道のカラバリ。
香水なんて、ここ何年も変えてない。
お洒落して見て貰いたいなんて思える相手もいないから、毎日の身支度も短時間で終了。
あの頃のトキメキが懐かしいとさえ感じるほどに。
「昨日、楢崎の家に行ったんでしょ?何作ったの?」
「……中華系」
「えーいいなぁ~!」
「つぐみ、おはよ」
「おはよう」
会社の最寄り駅で同期の瞳に会い、一緒に会社へと向かう。
「髪、いい感じになってる」
「そう?」
「うん。カラーもしてくれば良かったのに」
「それも考えたんだけど、今度にしようかと思って」
夏の初めなら少し明るめにしようかと思うけど、もう十月になろうとしている。
秋服はお洒落なものが多いけれど、あっという間に冬になるから、明るくすると髪だけ取り残されそうな気がして。
自分に合う色もいまいち分かってないし、結局踏みとどまったというのが正しい。
「つぐみって、ホント安全地帯しか歩かないよね」
「え?」
「石橋叩いて渡るっていうか。元彼のこともあってだと思うけどさ、二十代なんてあっという間なんだから、もう少し危険犯して冒険したっていいと思うんだけど」
「………言いたいことは分かるよ」
昔は当たって砕けろみたいな心構えで何でもトライできた。
勉強にしたって、やるだけやってダメなら次があるさ!的なポジティブ思考だったし。
だけど、二十代後半になって、少しずつ人生の折り返し地点を見据えて来ると、その勢いも半減してゆく。
派手すぎない服に落ち着いた色目のヘアカラー。
凝ったネイルでなく、仕事に支障をきたさないシンプルなもの。
メイク一つとっても、流行の色目ではなく、王道のカラバリ。
香水なんて、ここ何年も変えてない。
お洒落して見て貰いたいなんて思える相手もいないから、毎日の身支度も短時間で終了。
あの頃のトキメキが懐かしいとさえ感じるほどに。
「昨日、楢崎の家に行ったんでしょ?何作ったの?」
「……中華系」
「えーいいなぁ~!」