『絶食男子、解禁』

週明けの月曜日。

「鮎ちゃん、悪いんだけど、資材部に伝票の提出催促してくれる?」
「はい、分かりました」
「それと、送金予定の最終チェックも」
「はい、これが終わったらしておきます」
「……ねぇ、この珈琲って、私が淹れたやつだっけ?」
「……フフッ、三十分ほど前に、私が淹れたやつですよ」
「あっ、やっぱり?今日は休憩ブース行った記憶がなかったから、おかしいなぁとか思ったんだよね~」

経理部の直属の上司(課長)である前島(まえじま) (はな)、三十三歳。
二年前に離婚して、今は五歳児(辰希(たつき)くん)を育ててるシングルマザー。

仕事はバリバリできて、カッコいいお姉さんといった感じの見た目だが、性格は意外と天然なところある。
そのギャップが結構可愛くて、ついついお節介焼きたくなってしまう。

明日は昭和の日で祝日だし、明後日は月末日、その翌日から魔の忙殺期間(月初の業務)が待っている。
GWだなんて世間では夢の連休かもしれないが、経理部に勤務していたら、年末年始もGWも仕事に追われるのは当たり前。
その代わり、月半ばにずらして連休を取れるという利点もある。

祝日や連休を一緒に過ごしたいと思う相手がいるわけじゃない。
混雑する中、どこかに出掛けたいとも思えないし、空いてる平日に三連休取れたりする方が私的には好都合。

領収書の整理を終わらせ、資材部に催促の内線を入れ、送金予定の最終チェックを行う。

大手企業だから、職場環境的には恵まれている。
福利厚生はもちろんのこと、些細な業務一つ取ってもデータ化が進んでいて、手書きで帳簿を記入する手間が最小限に抑えられている。

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