『絶食男子、解禁』

二時間コースで予約しているらしく、丁寧な説明に合わせるようにエンジンを始動すると、物凄い音と共に振動がダイレクトに伝わって来る。

実際に羽田空港にあるRWY(滑走路)34から離陸を想定していて、エンジンのかかった機体を誘導路と呼ばれる場所を通過して滑走路へと移動し、そこから新千歳空港へと離陸した。

目まぐるしい情報の確認と手足と目と耳をフルに使い、高度35000ftに到達した頃には両手に汗がびっしょり。
けれど、コックピットから望む空の景色は、シュミレーターだと分かっていてもはやり圧巻だ。

「それでは、目的地の新千歳空港へと、着陸態勢に入りましょう」

初めてということもあり、自動操縦機能を使用しての疑似体験だけれど、それでもしなければならないことは山ほどあって。
実際には、管制官とのやり取りや気候の変化などあらゆる対応に追われながら操縦しているという説明を受け、日々安全に運航してくれている操縦士の方々に感謝してもしきれない気持ちになった。

俺から見た鮎川は、もはやプロなんじゃないかと思うくらい動作がスマートで。
アドバイザーのスタッフとも顔見知りなのか、疑似体験後に軽く雑談するほど。

「どうだった?」
「意外とハマるかも」
「でしょ?!今日は羽田からのプランだったけど、福岡から仁川空港(韓国)とか夜のフライトとかも設定できるし、この機種じゃなくて、ボーイングとかもあるんだよ」
「ボーイング?」
「今日のよりもっと大きな機体のやつ。車と一緒で、種類が違うと計器も椅子の形も違うし、操縦桿の形とか全然違うの」
「へぇ~、面白そうだな」
「また来ようよ!ってか、そのために会員登録したんだから♪」

鮎川はやり始めると何でもハマって凝りそうな性格。
普段中々体験できないような事だし、共通の趣味にするのも悪くない。

「オリジナルのお土産が買えるショップもあるんだよ」
「記念に何か買ってくか」
「いいね~」

< 114 / 157 >

この作品をシェア

pagetop