『絶食男子、解禁』

空港内のカフェで休憩し、その後はショップを幾つか見て廻った。

「甘いの好き?」
「え、…何、急に」
「誕生日祝いだから、ケーキでもと思ったんだけど、甘いのを食べてるところを見たことがなくて」
「別にあれば普通に食べるけど」
「あえて食べたりはしないってこと?」
「う~ん、クリーム系が苦手かも」
「あぁ、なるほど……。じゃあ、クリームがないケーキにするね!」

帰りにスーパーに寄って食材を買い、鮎川の家で夕食を作って貰うことになった。
誕生日祝いにケーキだなんて、高校の時以来かも。

電車に揺られながら、献立を決めている鮎川。
時折俺の顔を見て、“う~ん”と唸っている。
その顔も可愛くて、ぎゅっと抱きしめたくなる。

「メインは何なの?」
「教えなーい」
「ケチ」
「言ったらつまらないじゃない」
「知ってても楽しみなのは変わらないけど」

鮎川が作った料理なら、美味しいに決まってる。

聞いた話では、野菜ソムリエにワインソムリエに米マイスターなどの資格も持っているという。
本当は調理師の免許を取りたいらしいんだけど、どうやりくりしても受講条件が合わないらしい。

「そう言えば、税理士の試験結果っていつ?」
「十一月の中旬くらい」
「やっぱり国家資格だから時間がかかるんだな」
「司法試験も?」
「ん~。五月の頭に試験があって、結果は九月上旬」
「GWに被せてくるの?!」
「そうなんだよ。せめて六月にしてくれればいいのにな」
「真夏に受けるのもどうかと思ったけど、法務省も鬼畜だね~」
「だな」

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