『絶食男子、解禁』


「何か、することある?」
「う~ん、特には無いけど。というより、誕生日祝いなんだから、ゆっくり寛いでてよ」
「……じゃあ、テレビでも観てる」
「湯張りしとくから、お風呂もどうぞ」
「おっ、至れり尽くせり♪」
「いつものことじゃない」
「まっ、そうなんだけど」

明日は日曜日で仕事が休みということもあって、楢崎はお泊りの予定。
今までも何度も泊めているし、食事だってお風呂だっていつも通りなんだけど。
今日はいつもと、ちょっとだけ違う。

誕生日祝いだからというわけではない。
彼から気持ちを伝えられて保留にして貰っていることに、今日ちゃんと答えを出そうと思っているからだ。

NBAの試合を小一時間ほど観戦した楢崎は、浴室へと消えた。

デザートのケーキを仕込み、焼き上がるまでの間に夕食の準備も進めて。
楢崎がお風呂に入っている間に、ダイニングテーブルにホットプレートをセッティングした。

プレゼントも準備してあるし、あとは自分がシャワーを浴びるだけ。
まだ正式な彼女というわけじゃないから、形式に拘るのも変な気がするけれど。
これまでの彼の誠実さに態度で示すのが一番だと思うから。

女性らしく素直に甘えるのはこの先もできそうにない。
元々淡泊な性格だから、キャッキャ言うような女性像を求められても困る。

けれど、楢崎はそのままの私でいいと言ってくれている。

恋愛なんて過去の産物だと思っていたから。
久しぶりに震えるほどのドキドキ感に襲われている。
彼をちゃんと男性だと意識している証だ。

「うわっ、何この旨そうな匂い」
「今炊いてるところだから、蓋開けないでね」
「ん」
「じゃあ、私もシャワーして来るね」

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