『絶食男子、解禁』
*
夕食後、いつものようにリビングでスポーツ観戦しながら寛いでいると、横からの視線を感じた。
目力のある瞳、長い睫毛、スッと通った鼻梁、シャープなフェイスライン、色気のある喉仏。
そして、私の視線を釘付けにする薄い唇が僅かに開いた。
「鮎川」
本当は私から何か言わないとならないのに、きっかけが作れなくて困っていた。
甘いムードなんて作れるわけもなく。
ずっと保留にしていた宿題の答え合わせをするタイミングを見計らっていた。
スーッと伸びて来た手が肩に乗せられ、体重をかけるように軽く押し倒された。
さらりと彼の前髪が揺れる。
濡れそぼった唇に、いつにも増して色気を感じてしまう。
今日泊まることを承諾した時点…?
彼の自宅でなく、自分の自宅に誘った時点…?
違う。
デートに誘って、ちゃんと彼へ気持ちを伝えようと決意した時点で、覚悟していた。
こうなることを。
いい歳した男女がお酒を飲んで、相手の誕生日を祝い、家に泊まる前提なんだもん。
何も起こらないはずがない。
それこそ、今まで何もなかった方がおかしい。
いや、キスはあったけど。
それでも、世間一般論で言ったら、一晩泊めただけでも何かあってもおかしくない。
楢崎が紳士的すぎるのだろう。
ニットの裾からツーっと肌を撫でるように、彼の手が這い上がって来た。
顔を屈めた彼が、首筋に顔を埋めた、その時。
フラッシュバックのようにあの人がいつも抱く時のことが思い浮かんだ。
「う゛っ……気持ち悪い」
「え?」
両手で顔を覆い、ぎゅっと目を瞑って必死に思い出さないように試みるも、瞼の裏にあの人の顔がチラついて。
「やだッ、無理……止めてよッ!」
「っ……ごめん、何もしないから。……マジでごめん、今日は帰るな」
夕食後、いつものようにリビングでスポーツ観戦しながら寛いでいると、横からの視線を感じた。
目力のある瞳、長い睫毛、スッと通った鼻梁、シャープなフェイスライン、色気のある喉仏。
そして、私の視線を釘付けにする薄い唇が僅かに開いた。
「鮎川」
本当は私から何か言わないとならないのに、きっかけが作れなくて困っていた。
甘いムードなんて作れるわけもなく。
ずっと保留にしていた宿題の答え合わせをするタイミングを見計らっていた。
スーッと伸びて来た手が肩に乗せられ、体重をかけるように軽く押し倒された。
さらりと彼の前髪が揺れる。
濡れそぼった唇に、いつにも増して色気を感じてしまう。
今日泊まることを承諾した時点…?
彼の自宅でなく、自分の自宅に誘った時点…?
違う。
デートに誘って、ちゃんと彼へ気持ちを伝えようと決意した時点で、覚悟していた。
こうなることを。
いい歳した男女がお酒を飲んで、相手の誕生日を祝い、家に泊まる前提なんだもん。
何も起こらないはずがない。
それこそ、今まで何もなかった方がおかしい。
いや、キスはあったけど。
それでも、世間一般論で言ったら、一晩泊めただけでも何かあってもおかしくない。
楢崎が紳士的すぎるのだろう。
ニットの裾からツーっと肌を撫でるように、彼の手が這い上がって来た。
顔を屈めた彼が、首筋に顔を埋めた、その時。
フラッシュバックのようにあの人がいつも抱く時のことが思い浮かんだ。
「う゛っ……気持ち悪い」
「え?」
両手で顔を覆い、ぎゅっと目を瞑って必死に思い出さないように試みるも、瞼の裏にあの人の顔がチラついて。
「やだッ、無理……止めてよッ!」
「っ……ごめん、何もしないから。……マジでごめん、今日は帰るな」