『絶食男子、解禁』
「あれ?瞳もこれからなの?」
「うん、キリが悪くてこの時間」
いつもよりかなり遅めのランチになってしまい、社食に知り合いはいないと思っていたのに。
休憩時間が遅めだったのか、それとも顧客対応で今時間になったのか。
瞳が疲れた顔で小鉢のコーナーをウロウロしていた。
時間的に日替わりランチもレディースランチも完売していて、仕方なくパスタとサラダをトレイに乗せる。
「GWも仕事なんだよね?」
「後半は休めると思うけど、前半は仕事かな」
「経理部勤務の性だね~。あ、そう言えば、楢崎とはその後、どうなの?」
「どうなのって?」
「えっ……デートの約束とかしてないの?」
「……特には」
「えぇ~っ、せっかくの連休なんだから、どこか連れてって貰えばいいのに」
「彼には彼の予定があるでしょ」
「それじゃあ、ただの同期と何ら変わらないじゃん」
いや、私ら別に、変化を求めてないよ。
今まで通り、何ら変わらず、平凡な日常を送れたらそれで満足というか。
「おかしいと思ったんだよね~」
「何が?」
「あの楢崎が、“俺と付き合うか?”だなんて、天地がひっくり返ったと思ったもん」
「あぁ、……うん、私も思った」
「付き合うフリっての、よくあるけどさ。私は二人、本当に相性いいと思うんだけどなぁ」
瞳は恋愛体質というのか。
すぐに思考がそういう方向に向かう。
とりわけ、彼氏がいないと困るというものでもない。
あれは、お酒の勢いで了承したというのもあるから。
「そんな直ぐのすぐに関係性が変わるとか、無いんじゃない?別に好きで付き合い始めたわけじゃないんだし」
一応、フォローはしておこう。
タクシーで送って貰った御礼だと思えば、これくらい何てことない。
「そういうものかな…?」
「そういうものだよ」