『絶食男子、解禁』
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「悩み事ですか?」

年末年始の忙殺期間を乗り越え、久々にゆっくりとランチできるようになった一月六日。
もう楢崎と三か月近く会ってない。
というよりも、仕事を理由に避けているという方が正しいのか。

社食で見かけたりするけれど、お互いに気まずい雰囲気を醸し出してて、顔を合わせることがなくなった。

「恋愛って難しいね」

激混みになる時間帯を避け、十四時近くに後輩の和田さんと社食にやって来た。
十五時まで開いているため、静かにランチができるからだ。

「和田さんって、彼氏いるの?って、これセクハラになるか」
「別に大丈夫ですよ。今はいません。一年くらい前に別れたというか、転勤が決まって疎遠になってしまったので」
「遠恋ってこと?」
「遠距離でも続けられたら良かったんですけど、彼が中途半端なことしたくないって言って。結局別れるってことにしたんです」
「今も忘れられずに好きなんだね」
「……はい。高校の時から付き合ってたので」
「えっ、それって凄くない?!」
「どうなんでしょう…。お互いの両親も友人も、うちらが結婚すると思ってたみたいで、別れたって言ったらみんな固まってました」

自嘲気味に笑う和田さんは、いつものほんわかとしたイメージとかけ離れている。

「連絡しないの?」
「かけたら、きっと迷惑ですから」
「そんなことないと思うけど」
「便りが無いのは元気な証拠って言うじゃないですか。きっと向こうで可愛い彼女でも作ってますよ」

大好きだけど、彼の仕事の邪魔はしたくなくて、彼の背中を押してあげたんだろう。
そんな彼女に楢崎との事なんて相談できるわけない。
さすがにデリカシーがなさすぎると思うもの。

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