『絶食男子、解禁』
『ムードも気持ちもあったのに、体がちゃんと応えれなくて』と伝えたから。
和田さんの直球の言葉に、羞恥心でオブラートに包んだことすら恥ずかしく思えて来る。
「最終的には乗り越えるしかないんですけど、でもそれって一人でどうなるとかの問題じゃないと思うんです」
「…どういうこと?」
「要するに、彼とこの先もずっと一緒にいたいか、今だけの関係なのかってところで大きく分かれますし。楢崎さんとの未来を考えているなら、時間をかけても乗り越えなくちゃならないですし。何より、過去の腐った男たちより、楢崎さんがどれほど大事かってことですよ。過去に縛られるんじゃなくて、今や未来を彼と一緒にって考えたら、きっと嫌な出来事も気にならなくなるのでは?」
そうだよね。
キスにしたって、愛撫にしたって。
一人として同じ人なんていない。
過去に縛られていたら、楢崎の存在が霞んでしまう。
「荒療治になりますけど、別の男の人とシてみたらどうですか?」
「へ?」
「行為自体が嫌なのか、楢崎さんの行為が嫌なのか。意外と、勇気を出して試すことで自分の好みだとか気持ちってはっきりしますよ」
「どういうこと?」
「服とか髪型とか、自分にはこれが合ってると思っても、実は違うこともあるし。冒険してみたら、本来の良さが分かることもあるってことです」
「何だか、意外」
「何がですか?」
「彼氏一筋だったという和田さんとは正反対の考えだから」
「だからですよ。別れてみて、他の男の人との関係を大事にしたいと思えば思うほど、彼が忘れられなくて。結局、私には彼以外無理だって気付いたんです」
「……そうなんだね」
楢崎以外の人……か。
和田さんの提案は、本当に荒療治だ。