『絶食男子、解禁』
「待って待って待て待て。……え、じゃあ何か?過去のトラウマを払拭するために、試しに俺に抱けって言ってんの?」
「……うん」
「クソ意味分かんねーぞ、それ」
「原がパニクるのも分かるんだけど、私も本当に切実で」
「いや、それなら峻と話し合うべきだろ」
「ダメなの……。何度も話し合おうと思ったんだけど、自信がないというか。また同じようなことになったら、今度こそ立ち直れないというか…」
おいおいおいおい、どういう思考回路してんだよ。
あのイケメンアナウンサーと色々あったとは思ってたけど。
想像を遥かに超えるほどの激ヤバ人物だということが判明したうえ、そのトラウマを払拭するために彼氏の友達に抱かれたいと考えに及ぶとか…。
マジで思考が追い付かないんだけど。
「原って、一夜限りの子でも抱くんでしょ?」
「っ……」
否定はできないけど。
さすがに、峻の彼女だし。
同期っつーのがなぁ…。
可愛いし、美人だし、フリーなら全然ウェルカムなんだけど。
さすがにこれは……。
ルームサービスが来たようだ。
鮎川がドアを開けに駆けてゆく。
「見てみて~、凄い美味しそうだよ♪」
無邪気に微笑む彼女を視界にとらえる。
食べるだけ食べて、説得するしかねーか。
*
「おいっ、もうよせって!」
「酔い潰れて記憶が飛べば、原も好都合でしょ?」
「いやいやいやいや、記憶が飛ぶ前提なら、する意味なくね?」
羞恥心を取り払いたいのか。
俺に気を遣ってなのか。
鮎川はワインを結構なペースで飲んでいる。
グラスを持つ手を阻むように掴んだら、その俺の手をもう片方の手で掴み返して来た。
「……どんなことされても、クレームつけないから。……ね?」
「っっっ……マジで何なんだよっ」