『絶食男子、解禁』


『ここに鮎川がいるから、今すぐ迎えに行ってやって』

二十時半過ぎ。
帰宅途中で受信した純也からのメールには、地図が添付されていた。

「……ホテル?」

品川駅に程近いホテルの情報が添付されていて、何故そんな場所に鮎川がいるのか。
何故それを純也が知っているのかという疑問が湧いてくる。

自宅に程近い最寄り駅に到着したばかりの俺は、すぐさま改札をくぐり直した。

ホームで電車を待っていると、ピコンと再びメール受信を知らせる音が。

『峻、ごめんな。鮎川にちょっと手出した』

えっ、……どういうこと?
“ちょっと手出した”って、何??

そう言えば、数日前に“相談したいことがある”的なことを聞かされたけど。
それが今日だったってこと?

何がどうしたらホテルでそういうことになるんだよ!

すぐさま純也に電話をかける。

「もしもし?どういうこと?」
「……マジでごめん」
「だから、どうしてそーいうことになんのかって聞いてんじゃん!」

電話越しに苛立ったって仕方ないのに。
怒らずにはいられない。

「実は…―…」

溜息交じりに説明する純也。
普段明るいのが取り柄の奴が、今日ばかりは覇気がない。

鮎川から元彼とのことを聞かされ、俺とのことも話したらしい。
けれど、アンニュイな感じで話す純也に、詳しく聞かされてないのかもしれないと思った。

「それで、俺以外と試そうとしたってわけ?」
「……ん」

過去のトラウマを克服したいのは分かる。
だからと言って、俺以外の男で試す理由にはならないだろ。

「で、……どこまでしたんだよ。“ちょっと”って言うくらいなんだから、最後までしてないんだよな?」
「当たり前だろ!さすがにそこまで落ちぶれてねーわ」
「いや、手出した時点でアウトだっつーの」
「……それには言い訳しない。本当にすまない」
「で、……どこまで?」
「それ聞くか?」

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