『絶食男子、解禁』
*
原は遊び慣れてるからなのか。
キスは結構上手くて、元彼のことなんてチラつきもしない。
けれど、いざベッドに横たわって、これからが本番という時になったら…。
元彼ではなく、楢崎の顔が真っ先に思い浮かんだ。
同じ二十八歳。
同じ会社に勤務する同期であっても、当然別の人物だし、匂いだってぬくもりだって違う。
原の手が、胸元からブラウスのボタンへと伝った、その時。
自分が今何をしているのか、漸く理解できた。
自分のことしか頭になかった。
彼の気持ちなんて微塵も考えていなかったことに、今更ながらに気づいた。
お酒の力を借りて半ば強引に迫った私を、原は渋々受け入れてくれたようなもの。
目尻から零れる涙を、原は安堵の溜息と共に拭ってくれた。
「気は済んだか?」
「……ごめんね」
ベッドサイドに座り直した彼は、前髪を掻き乱しながら苦笑した。
「峻に殺されるな」
「原は何も悪くないよっ。悪いのは私だし、彼にはちゃんと私から説明するから」
「もう他の男に抱かれようとか、マジで考えんなよ?俺だからよかったものの、他の奴だったら速攻で食われてんぞ」
「……ん」
「二人のことは俺には分かんねーけど、とことんぶつかるまで話し合え。腹の内話さなくて、先には進めねーぞ」
「…ん」
「それと、このこと篠田には内緒な?あいつに知られたら、マジで会社辞める羽目になりそう」
「分かってるって」
「じゃあ、峻に連絡入れとくな?」
「……ん」
「あとで飯でも奢れよ?」
「…ん」
原は遊び慣れてるからなのか。
キスは結構上手くて、元彼のことなんてチラつきもしない。
けれど、いざベッドに横たわって、これからが本番という時になったら…。
元彼ではなく、楢崎の顔が真っ先に思い浮かんだ。
同じ二十八歳。
同じ会社に勤務する同期であっても、当然別の人物だし、匂いだってぬくもりだって違う。
原の手が、胸元からブラウスのボタンへと伝った、その時。
自分が今何をしているのか、漸く理解できた。
自分のことしか頭になかった。
彼の気持ちなんて微塵も考えていなかったことに、今更ながらに気づいた。
お酒の力を借りて半ば強引に迫った私を、原は渋々受け入れてくれたようなもの。
目尻から零れる涙を、原は安堵の溜息と共に拭ってくれた。
「気は済んだか?」
「……ごめんね」
ベッドサイドに座り直した彼は、前髪を掻き乱しながら苦笑した。
「峻に殺されるな」
「原は何も悪くないよっ。悪いのは私だし、彼にはちゃんと私から説明するから」
「もう他の男に抱かれようとか、マジで考えんなよ?俺だからよかったものの、他の奴だったら速攻で食われてんぞ」
「……ん」
「二人のことは俺には分かんねーけど、とことんぶつかるまで話し合え。腹の内話さなくて、先には進めねーぞ」
「…ん」
「それと、このこと篠田には内緒な?あいつに知られたら、マジで会社辞める羽目になりそう」
「分かってるって」
「じゃあ、峻に連絡入れとくな?」
「……ん」
「あとで飯でも奢れよ?」
「…ん」