『絶食男子、解禁』
*
三十分ほど前。
駅のホームで火がついた俺は彼女の手を取り、再び改札口を抜け、タクシーに乗り込んだ。
そして、部屋まで待ちきれない俺は、自宅があるマンションのエレベーターに乗ると同時に彼女の唇を求めた。
自宅のベッドに組み敷いた鮎川は、とめどなく甘い声を洩らす。
ほんの少し前にこの声を純也が聞いていたのかと思うと、怒り狂いそうで。
いけ好かないあの男が、こんな鮎川を何度も啼かせていたのかと思うだけで、正気じゃいられない。
彼女に過去があるように、俺にも過去がある。
俺が彼女の過去を上書きするように。
彼女が俺の過去を上書きしてくれるだろう。
呪縛だと思い込んでたトラウマでさえ、気にならなくなるほど。
鮎川のこと以外、何も考えられない。
滑らかな肌を愛おしむように唇を這わせ、余すことなく味わうように薔薇を散らす。
辰希が自慢してたように、鮎川の胸とお尻は物凄く柔らかくて。
別の場所へと指先を彷徨わせるのが惜しくなるほど。
あの男がこの胸に溺れるのが分かった気がした。
これは病みつきになる。
「楢崎っ」
「その呼び方、マジで萎える」
「ふぇっ…」
いい加減、苗字呼びから卒業したい。
建前でなく、正真正銘の恋人同士なら当たり前だろ。
とろんとした表情の彼女の耳にそっと囁く。
「つぐみ、……峻って呼んでみ」
「っっ…」
わざと煽るように耳朶を甘噛みする。
すると、
「……しゅ、んっ」
照れを隠すために手の甲が口元に。
「ちゃんと見せて」
「っ…」
「この顔見れんのも、俺の特権だろ」
「っっっ」
「だから、つぐみも……俺の余裕のない顔、その目で見とけ」
他の誰でもない。
愛する人だから、恥ずかしい顔も見せられる。
こんなこと、口にするキャラじゃないんだけど。
もう彼女には何一つ隠しておきたくない。
彼女の全てが欲しいから。
俺の全てを受け容れて―――。
三十分ほど前。
駅のホームで火がついた俺は彼女の手を取り、再び改札口を抜け、タクシーに乗り込んだ。
そして、部屋まで待ちきれない俺は、自宅があるマンションのエレベーターに乗ると同時に彼女の唇を求めた。
自宅のベッドに組み敷いた鮎川は、とめどなく甘い声を洩らす。
ほんの少し前にこの声を純也が聞いていたのかと思うと、怒り狂いそうで。
いけ好かないあの男が、こんな鮎川を何度も啼かせていたのかと思うだけで、正気じゃいられない。
彼女に過去があるように、俺にも過去がある。
俺が彼女の過去を上書きするように。
彼女が俺の過去を上書きしてくれるだろう。
呪縛だと思い込んでたトラウマでさえ、気にならなくなるほど。
鮎川のこと以外、何も考えられない。
滑らかな肌を愛おしむように唇を這わせ、余すことなく味わうように薔薇を散らす。
辰希が自慢してたように、鮎川の胸とお尻は物凄く柔らかくて。
別の場所へと指先を彷徨わせるのが惜しくなるほど。
あの男がこの胸に溺れるのが分かった気がした。
これは病みつきになる。
「楢崎っ」
「その呼び方、マジで萎える」
「ふぇっ…」
いい加減、苗字呼びから卒業したい。
建前でなく、正真正銘の恋人同士なら当たり前だろ。
とろんとした表情の彼女の耳にそっと囁く。
「つぐみ、……峻って呼んでみ」
「っっ…」
わざと煽るように耳朶を甘噛みする。
すると、
「……しゅ、んっ」
照れを隠すために手の甲が口元に。
「ちゃんと見せて」
「っ…」
「この顔見れんのも、俺の特権だろ」
「っっっ」
「だから、つぐみも……俺の余裕のない顔、その目で見とけ」
他の誰でもない。
愛する人だから、恥ずかしい顔も見せられる。
こんなこと、口にするキャラじゃないんだけど。
もう彼女には何一つ隠しておきたくない。
彼女の全てが欲しいから。
俺の全てを受け容れて―――。