『絶食男子、解禁』
とある日のランチタイムに前島課長と共に社食へと。
「前島、ちょっといいか?」
「はい。……鮎ちゃん、ごめんね。下山部長に捕まった」
「私は大丈夫ですよ」
経理部の部長・下山 務 五十歳。
“鬼奉行”と言われるほど、業務に厳しい上司。
けれど、オンオフの切り替えが上手で、“休みはしっかり取るように”と常に体を労わってくれる優しい人だ。
大のお酒好きで、飲み会時はいつも豪快に飲んでいて、最近ぽっこりお腹を気にし始めた。
「わっ!」
「ッ?!ちょっと、驚かさないでよっ」
「ボーっと立ってる方が悪いでしょ。後ろが閊えるから早く選んで」
「あ、ごめん」
日替わりランチのミックスフライ定食は完売してしまったようだ。
プリプリのエビフライが絶品で、直ぐに完売してしまう幻のランチ定食。
入社六年目だけど、数回しか食べたことがない。
定番のメニューは既に器に盛られていて、それをトレイに乗せ自動精算機の上に乗せるだけで、予め登録してある自社アプリで決済される。
日替わりランチや揚げ物、麵物などは対面方式でオーダーし、それをトレイに乗せるシステムだ。
私は若鶏のもろみ漬け定食、瞳は海鮮ちらし丼を手にして奥の飲食スペースへと。
「あ、楢崎たちがいるよ」
「え?」
瞳は原と楢崎を見つけ、迷うことなくその場所へと向かう。
仕方なく、彼女の後を追って彼らの元へ。
「はい、……はい、分かりました。では、修正後にメールにてスポンサー契約に関する約款を事前にお送り致します。……はい、では、失礼致します」