『絶食男子、解禁』
『一緒に住む家、探さないか?』
これって、プロポーズ??
真顔で焼魚を箸で突きながら、サラッと口にした彼。
どういう思いで口にしたのだろう。
「それって、……どういう意味?」
「言葉のまんまだけど?」
私の言葉に反応するように箸を置き、ゆっくりと視線を持ち上げた。
「こんな風に半同棲生活みたいなことするんじゃなくて、ちゃんとけじめをつけたいと思って」
「それって……」
「俺は、結婚はあくまでも通過点だと思ってる。……生涯、一緒に暮らさないか?」
「ッ?!!」
彼は敏腕弁護士だ。
『はい』と快諾するように、言葉選びが上手すぎる。
私の気持ちなんて全てお見通しで、考える余地さえ与えて貰えないほどに。
「返事は?」
「……はい。宜しくお願いします」
色気のある薄い唇の端が緩やかに持ち上がった。
「こちらこそ、よろしくな」
緑茶の入った湯飲みが差し出された。
ビールジョッキで乾杯するかのように、湯飲みをこつんと合わせた。
宝石でも花束でもなく、朝食と緑茶でのプロポーズだなんて、私たちらしいかも。
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「つぐみっ!楢崎と結婚するって本当なの?!」
「シッ!声が大きいっっ」
「あ、ごめん」
顧客管理部に所属している瞳は、四月からの新入社員教育係を担当することになったらしく、入社前の準備に追われているらしい。
久しぶりに社食で居合わせたら、物凄い形相で駆け寄って来た。
社食の隅のテーブルを確保し、瞳と並んでランチする。
「結婚はまだ先のことだけど、一応、仕事が落ち着いたら同棲することになったの」
「うっっっわぁ!原の話、ホントだったんだぁ」
「……うん」
瞳の視線から逃れるように手元に視線を落とすと、五目あんかけ焼きそばの上にエビ天が乗せられた。
「絶品エビフライじゃないけど、私の気持ち♪」
「フフッ、ありがと」