『絶食男子、解禁』
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四月中旬のとある日。
二カ月ぶりの同期会は、いつものように居酒屋『紋』で行われる。

「峻と鮎先の婚約を祝して~♪カンパーイ!!」

原の乾杯音頭で同期会がスタートした。

気心知れてるこのメンバーは、本当に得がたい同志だと思う。
部署も違うし、育った環境も全く違うけれど、適度な距離感が絶妙な空気を纏っていて、どんなことがあっても寄り添えるような気がする。

二カ月前のあの日。
私が原にあんなことを頼んだことさえ、悪い夢でも見てたんだろう?的な感じで、原も峻もさらりと流してくれた。

「あのね、みんなに報告というか、……お知らせがあるの」

ビールで乾杯し、ある程度落ち着いた頃合いを見計らって、話を切り出した。

「もしかして、つぐみ、オメデタなの?」
「えっ、マジか?!峻、パパになんのか?」
「は?……つぐみ、妊娠したの?」

え?
どうして、そうなるの?
まだ、『報告』『お知らせ』としか言ってないのに。

変な期待をさせるようなことを言った覚えはないんだけど。
それに、もし妊娠したとしても、真っ先に峻にだけ伝えるよ、そういうことは。

「えっと、……妊娠はしてないから。ご期待に応えれず、すみませんっ」
「えぇ~っ、なぁ~んだぁ」
「何だよっ、マジでビビらせんなよな」

原と瞳が落胆する。
思わずいたたまれなくなって、視線を相対する席に座る峻に向ける。
私たち、ちゃんと避妊してるよね?と。

「フッ…。純也も篠田も、いい加減にしろよ?つぐみが言い出しにくくなってんじゃん」
「あっ、ごめん」
(わり)ぃ、(わり)ぃ」
「で、お知らせって何なの?」
「……実はね。四月から私、課長に昇進するの」
「えっ、マジで?」
「うそっ!?凄くない?」
「うっわ!先越された~」

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