『絶食男子、解禁』

財務部の部長が体調不良を理由に退職することになり、現経理部の部長である下山部長が財務部部長として配属されることとなった。
それに伴い、経理部課長の前島課長が部長に昇進し、主任である私が課長のポストに就くこととなった。
今朝、会社から内示を貰い、部長の許可を貰って今に至る。

「もしかして、税理士の資格取ったのが、決定打だったんじゃね?」
「そうなのかな…?」
「それもあるだろうけど、支社からの栄転より、本社を知り尽くしてるつぐみに白羽の矢が立ったと私は思うなぁ」

下山部長も税理士の資格を保有している。
前島課長は四科目取得していて、結婚して出産を機に勉強は一時お休みしている状態。
あと数年もすれば、たっくんからも手が離れるし、また試験対策するだろう。

WINGでは、資格保有に伴う福利厚生も充実している。
給与、賞与だけでなく、色んな面において優遇されるのだ。

「課長昇進、おめでとう」
「つぐみ、おめでとう!」
「おめでとなっ!よーし、乾杯し直すぞ~」
「でも、まだ内示だから、ここだけの話にしてね?」
「分かってるって」
「OK、OK♪」
「俺ら四人の秘密ってことで。漏らした奴は、俺が法的処置取るからな?」
「えぇ~っ、何それ~」
「『えぇ~っ』って、篠田、バラすつもりかよ」
「いや、そんなことするつもりはないけど、釘刺されるとドキッとするよ」
「ハハハッ、峻はこーいう奴だから、サラッと流しとけ」
「お前は口が軽いから、一番気を付けろ」
「あーはいはい、お口にチャックしときますよ~」

大好きな彼と時間を共有するのは当たり前だけど。
この二人とも、七年の時間を共に過ごして来た。
私にとって、かけがえのない時間だ。

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