『絶食男子、解禁』
「で?」
「“で?”って??」
「結婚を決意したきっかけは?」
「は?何でここで言わなきゃなんねぇんだよ」
「別にいいじゃん。俺がいなかったら、今頃っっんッ」
純也の口の中にデカい唐揚げを押し込んだ。
普段から軽口の純也は、酔いが回ると更に度が増す。
危うくあの日のことが篠田にバレるところだ。
俺の目の前に座っているつぐみは目を見開いて、焦ってビールを仰ぎ飲む始末。
これじゃあ、勘のいい篠田に白状してるようなもんだな。
「なーに?三人して、私に隠し事?」
ほら来た。
こういう時、原はすぐにペラペラと白状しちゃうし、つぐみはしどろもどろになる。
仕方ねぇ、俺が対応するか。
「少し前につぐみとぎくしゃくしてた時に、純也に間に入って貰ったってだけだよ」
「あ、もしかして私が研修準備で忙しかった時?」
「そうそう、そん時」
「純也っていつもおチャラけてるのに、意外と義理人情に厚いよね~」
「だな。……今日はあまり飲んでないんだな」
「明日、デートなんだよね~♪」
「彼氏できたの?」
「彼氏ではないんだけど、彼氏になるかもしれない人?」
無言でビールを煽っていたつぐみが、篠田の話に反応を示した。
「どんな人なの?」
「う~ん、五歳年上のバツイチ」
「バツイチ?」
「ん。……何でか分かんないけど、近づいてくる人って結局は“遊びたい”人ばっかりで。私は結婚したいから、初めから“結婚”を意識してる人がいいなぁと思って」
「でも、離婚してるんなら、再婚は慎重にならない?」
「どうなのかな…。二歳の男の子がいて、母親が必要だって言ってたから」
「それって、恋人が欲しいんじゃなくて“母親”が欲しいだけじゃない?」
「……そうなんだろうね」