『絶食男子、解禁』
「わぁ~♪可愛い!」
「雑誌でしか見たことないよっ」
隣りのテーブルの招待客が、3Dアートで作られたシロクマを嬉しそうに眺めてる。
会場内が優しい空気に包まれる。
希望者全員にラテアートを贈るというコンセプトらしい。
あちこちからカシャカシャとシャッター音が聞こえて来る。
「あとで篠田に教わろ」
「あ、私も」
ハンドドリップが好きな峻は、瞳の特技に興味を示した。
「バリスタの資格取りたいな~とか考えてるだろ」
「えっ、何で分かるの?」
「分かるよ、それくらい」
フッと微笑した彼は、『俺らも頼んで来ようぜ』と言って私の手を引く。
参加型の披露宴って、記憶に残るし、いいかも♪
一歩先を歩く彼の背中を見つめ、私たちの結婚式はどんな風になるのかな?と思いを馳せた。
*
キャンドルサービスではなく、果実酒ラウンド。
ビュッフェのように用意されたコーナーから好きなフルーツを盛って来るというもの。
そこに、各テーブルを新郎新婦が廻り、シャンパンかサイダーが注がれるらしい。
ノンアルコールの人向けにはフルーツポンチで対応するという。
「アルコールがお飲みいただける方には、熟成年数十年以上のドンペリニヨン・ロゼをご用意致しました」
「ピンドン?」
「マジか?!」
会場内がどっとわき起こる。
二人が用意したのは、ドンペリピンクと呼ばれる高級シャンパンらしい。
「飲んでる~?」
「お前ら、気前がいいな」
「こういう時くらい、パーっと行かないとな」
「じゃあ、俺シャンパンで」
「つぐみは?」
「私も♪」
「すみませーん、俺ら四人の写真お願いしていいですか?」
原と瞳が真横に来て、グラスを傾けて記念撮影。
楽しそうな二人が見れて、本当に幸せな気分になった。