『絶食男子、解禁』
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「遅くまで、ありがとうね」
「お腹大丈夫?張ってない?」
「休み休みしてたから、大丈夫。高校時代の友達に助産師さんがいて、さっき診て貰ったし」
「それならいいんだけど」

披露宴が無事に終わり、ゲストの見送りも終わった瞳と会話する。
原は式場のスタッフと話があるようで、瞳のことをお願いされた。

「素敵なお式だったね」
「ありがと。みんなに楽しんで貰えるようにいっぱい考えたよ」
「今まで色んなお式に呼ばれたことあるけど、今日が一番印象的で楽しかった」
「そう言って貰えると、頑張った甲斐があるよ」

最近急に目立つようになって来たお腹を摩りながら、瞳が優しい笑みを浮かべる。

「クイズのやつ、めっちゃウケた」
「でしょ?!」
「本当はもっとあったんだけど、絞りに絞ってあの三問だよ」

ネクタイを少し緩めながら、峻が口を開いた。

「マーガリンの使い方なんて、どっちでもよくね?」
「えぇ~っ、峻はオールラウンダーなんだ」
「私も特に気にしない派かも」
「うっそ、マジで?」
「うん」

二人がくだらないことで喧嘩したのは、『マーガリンの使い方』だった。

「他にはどんな質問用意してたの?」
「えーっとねぇ。トイレットペーパーはシングルか、ダブルかとか。靴や靴下を履くなら、右か、左かとか?」
「くだらねぇ」
「でも、そういうことを話し合えるってことが大事じゃない?」
「そそ、それだよ!相手を強制させるとかは別次元で、他愛ない話で間が持つってのが大事だよね」
「何の話してんだ?」

三人で会話しているところに原が割って入って来た。

「くらだねぇ喧嘩のクイズのやつ」
「あー、あれね」
「ご新婦様っ」
「あっ、忘れるところだった」

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