『絶食男子、解禁』

「それと、峻がイケメンだって言うお兄さんにも会いたいし」
「優男だよ?」
「優男かぁ、私の好みじゃないから安心して」
「俺、優しいじゃん」
「優しいのと、優男の顔とは別物でしょ」
「え、そうなの?」
「そうだよ。どっちかというと、峻はクール系かな」
「あーそれは作ってる顔だな」
「……だよね」

会社ではクールフェイスで近寄りがたい雰囲気を出しているが、普段の彼は結構ナチュラルで明るい雰囲気。
ジョークも言うし、家事も割と率先してやってくれるし、何より私にだけ極甘だ。

私が彼の好物を作りたいと思うように、彼は私の好きなテレビ番組を録画しておいてくれたり、試験対策の勉強にも嫌な顔一つせず付き合ってくれる。
ついこの間も電卓実務検定の試験対策で、二時間も読み上げ役をしてくれた。
こんなに完璧な人、どこを探してもいないよ。

そう言えば、瞳が前に言ってたな。
フォークのような人より、スプーンのような人が欲しくなると。

二十代前半は親友からの評価がいい彼氏。
二十代後半になると、親友になれる彼氏がベスト。
日常に輝きを求め、ディナーに誘ってくれる恋人が欲しい二十代前半。
未来を感じさせ、この先も一緒にいたいと指輪を期待する二十代後半。

瞳の恋愛指標って、本当に凄い。
峻のことを言ってるのかと思うくらい当て嵌まる。

「好きっ、……大好き」

理想を遥かに超えている恋人の首に抱きついた。
ウェディングブーケの威力って凄まじい。
こんなにも計り知れないほどの幸せを連れて来てくれるだなんて。

「珍しいな、つぐみから甘えんの」
「っ…」
「俺は毎日でも嬉しいけど」
「っっっ~~~んっ…」

焚きつけるような彼の口づけに、体の芯から仄かに甘い刺激を感じて―――

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