『絶食男子、解禁』
不快の定義
七月上旬、スポーツフェス二日目。
連日のにびいろの空が、嘘のような青く澄み渡った夏の朝。
背中に天使の羽がプリントされたイベントポロシャツ姿のつぐみが、山積みされた段ボールから自社製品を販売ブースに陳列していると。
「あれ?…鮎川じゃん」
「あっ、原おはよう」
「何でいんの?」
「人手不足で後輩の子が駆り出されてたんだけど、昨日捻挫しちゃって…」
「その後輩の代わりなんだ?」
「うん」
同期の原が営業部のスタッフと共に販売ブースに現れた。
毎年行われる『WING FESTIVAL』は十五年前から始まり、来場者は毎年百万人を優に超え、二百億円を超える市場規模。
フェス会場は五か所あり、各競技の『聖地』と呼ばれる場所を中心に、主要な大会が開かれる施設で催される。
五日間開催されるフェスは、
普段テレビや雑誌でしか見ることのできないプロ選手を生で見れるとあって、国内外から連日多くのファンが詰め寄せる。
老若男女、年齢・性別・国籍も問わず、もちろん経験・未経験も問わない。
このイベントを通じてスポーツの活性化が行われ、一人でも多くの人に『体を動かす楽しみ』が伝わるようにというのがフェスのコンセプト。
「原、ここ任せていいか?俺は中チェックしないとならないし、中岡と荻野は別会場の見回りもしなくちゃならないから」
「はい、分かりました」
上司と思われる男性が別の営業社員二人を連れ、会場の奥へと進んでいく。
「今日暑くなるっていうから、小まめに水分摂れよ」
「……ん」