『絶食男子、解禁』


『今日一日、お前の可愛い彼女、借りるな』

朝一で純也から送られて来たメールに、画像が添付されていた。
そこには、フェスイベントのスタッフポロシャツを着た鮎川の写真が数枚。

普段はシンプルにハーフアップに纏めていることが多い彼女が、暑さ対策なのか、ふんわりと緩くシニヨンに纏め上げていて、入社六年目にして初めて見るその姿にドキリとしてしまった。

イベントスタッフとして、毎年各部署からスタッフが駆り出されているのは知っていたが、まさか純也と同じ会場だったとは。

真剣な表情で商品を陳列しているところを見ると、本人の許可なく撮影したのだろう。
そして、それを勝手に俺の所に送って来たというわけか。

『盗撮は迷惑防止条例違反だぞ』

下着姿だとか、性的な意味合いでの盗撮ではないとはいえ、弁護士が事実を容認できるわけではない。

『相変わらず、優等生だな』

メールを送って寄こしたのは、わざとなのか、あえてなのか分からないが、俺と鮎川の関係を好意的に捉えてくれている原。
苛めの一件以来、鮎川のことを大事にしているのが分かる。
女性慣れしている原なら、俺なんかよりもっと上手く付き合えるだろうに。

『可愛いからって、口説くなよな』

社交辞令的なメッセ―ジ。
彼氏として牽制しなければならないという建前上。

『ばーか、ダチの女に手を出すほど、落ちぶれてねーわ』

俺のメッセージを本気にしたのか、あえて応えてくれてるのか、分からない。
けれど、嘘を吐かない性格なのは熟知している。
女遊びが派手でも、俺にとってはかけがえのない同期だ。

< 43 / 157 >

この作品をシェア

pagetop