『絶食男子、解禁』
*
十九時過ぎに終わる鮎川を迎えに、有明コロシアムに到着。
イベント自体が十九時半までの会場なのに、電車の中でもフェスの熱気が伝わって来た。
イベントグッズを手にして燥ぐ子供。
撮影したプロ選手の写真を確認しながら、話に花を咲かせる若者。
『また来年も連れて来てね』と旦那に強請る初老の女性。
たくさんの人々がフェスを楽しみ、心を弾ませているのが伝わって来る。
入口前にあるテントへと歩み寄った、その時。
テントの端にいる鮎川の腕を掴む長身の男性が視界に入った。
「だから、何度も言ってますけど、彼氏と食事に行くんです!」
「俺も連れてってよ」
「日本語分かります?ここ、日本なんですよ」
キャップを目深に被り、人目を避けようとしてるのだろうが、著名人のオーラがあるというか。
有名アナウンサーの認知度は伊達じゃない。
『西野アナじゃない?』『え、嘘っ、ホントだ!』という声が漏れて来る。
「峻っ」
俺に気付いた原が、気まずそうな顔を浮かべた。
「すみません。その手、離して貰えますか?」
「……つぐみの彼氏?」
つぐみ、呼び捨てにする仲なのか。
「そうですけど」
鮎川の腕を掴む西野の手を振り払う。
公然の場において、下手な真似は出来まい。
「もう帰れるか?」
「…うん」
こくりと頷く彼女の手を掴み、純也に視線を向ける。
「純也、お先に」
「おぅ、鮎川、お疲れさん」
「お先に失礼します」
残ってる派遣スタッフに会釈した鮎川。
俺の手を握り返した。
「彼女と二人で食事したいので、失礼します」
苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた西野。
俺らは奴をその場に残し、駅へと足早に歩き出した。
十九時過ぎに終わる鮎川を迎えに、有明コロシアムに到着。
イベント自体が十九時半までの会場なのに、電車の中でもフェスの熱気が伝わって来た。
イベントグッズを手にして燥ぐ子供。
撮影したプロ選手の写真を確認しながら、話に花を咲かせる若者。
『また来年も連れて来てね』と旦那に強請る初老の女性。
たくさんの人々がフェスを楽しみ、心を弾ませているのが伝わって来る。
入口前にあるテントへと歩み寄った、その時。
テントの端にいる鮎川の腕を掴む長身の男性が視界に入った。
「だから、何度も言ってますけど、彼氏と食事に行くんです!」
「俺も連れてってよ」
「日本語分かります?ここ、日本なんですよ」
キャップを目深に被り、人目を避けようとしてるのだろうが、著名人のオーラがあるというか。
有名アナウンサーの認知度は伊達じゃない。
『西野アナじゃない?』『え、嘘っ、ホントだ!』という声が漏れて来る。
「峻っ」
俺に気付いた原が、気まずそうな顔を浮かべた。
「すみません。その手、離して貰えますか?」
「……つぐみの彼氏?」
つぐみ、呼び捨てにする仲なのか。
「そうですけど」
鮎川の腕を掴む西野の手を振り払う。
公然の場において、下手な真似は出来まい。
「もう帰れるか?」
「…うん」
こくりと頷く彼女の手を掴み、純也に視線を向ける。
「純也、お先に」
「おぅ、鮎川、お疲れさん」
「お先に失礼します」
残ってる派遣スタッフに会釈した鮎川。
俺の手を握り返した。
「彼女と二人で食事したいので、失礼します」
苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた西野。
俺らは奴をその場に残し、駅へと足早に歩き出した。