『絶食男子、解禁』
「……モラハラ、セクハラで訴えるぞ」
「真面目な質問だよ。そんな恵まれたもの持ってんのに」
酔いに任せてなのか、瞳が唐突に質問を投げかけ始めた。
「まさか、童貞ってわけじゃないでしょ?」
「お前に答える義理はない」
「じゃあさ、何で女の子に興味がないの?昔付き合ってた彼女に酷いフラれ方したとか?」
「あー、ごちゃごちゃうるせーな」
「鮎川は?」
「え?」
「何で、男嫌いなの?」
「……」
どうして私に会話を振るかな。
楢崎じゃないけど、答えたくない。
けど、何も言わなかったらずっとしつこく聞かれそう。
「嫌いっていうより、必要性が見出せないっていうか」
「でもそれって、必要だって分かったらいいってことだろ?」
揚げ足取らなくてもいいのに。
「お前ら、付き合えばいいじゃん」
「案外、似た者同士で合うんじゃない?」
「理想を理解してるから、好都合だろ」
うんうんと頷く瞳と原。
目の前に座る楢崎へと視線を向けると、しれっとした顔でビールを喉に流し込んでる。
「峻も鮎川も、社内で結構モテてるじゃん。年に何回も告られてるだろ。恋人がいれば、そういうのもなくなるだろ」
「そうだよ。体目当てで口説いて来る男がいなくなるなら、お試しに付き合うのもアリだよ、つぐみ」
「別に、……そんな困るほど口説かれてるわけじゃ…」
「よく言うよ!この間だって、お花見の時に胸触られたって言ってたじゃん」
「あ、あれは……」
二週間ほど前にあった花見の席で、購買部の人に後ろから抱きつかれた拍子に軽く揉まれたという思い出したくない記憶だ。