『絶食男子、解禁』
同期で親友、同性で同じ年ということに安心しきってしまったのか。
楢崎には話してない、元彼とのことを瞳には話してしまった。
お酒の力を借りてなのか。
元彼と会ったことで知らないうちに精神的に病んでいたのか。
大学時代の親しい友人と仲の良かった一つ下の後輩しかしらないことなのに。
二度と思い出したくもなかった出来事を…。
「すみませーん!生中二つ追加~」
ビールの減りが早くて嫌になる。
お酒に逃げても何も解決しないと分かっているのに。
「楢崎は、何て?」
「ん?」
「元彼に嫉妬してた?」
「……どうだろ?あの場は上手くかわしてくれたし、愚痴みたいな話も聞いてくれたけど…」
正直なところ、あまり表情を崩さなかったように思う。
別に本気で付き合ってる彼女なわけでもないし。
嫉妬するような間柄でもない。
建前上、彼女を大事にしている体で接してくれただけ。
「それじゃ、全然ダメじゃん」
「は?……あれ以上を望んだら、罰が当たるよ」
「当たらないよ!彼女だよ?昔の男が言い寄って来たら、本領発揮して貰わなきゃ!」
「……ごめん、意味わかんない」
楢崎に求めることなんて何もない。
あの日、元彼を上手くあしらってくれただけで十分。
言いたいことは言っていい。
我慢しなくていい。
辛い時は頼って、だなんて言ってくれたけど。
社交辞令的な気遣いで言ってくれたのは分かるから。
「楢崎の女嫌いもさ、つぐみと似た感じで、何らかの理由があると思うんだよね。絶対に口割らなそうだけど…」
「……ん」
「あの爆イケが絶食男子になるほどの何か……めっちゃ気になるぅぅ~~」
女性の扱いに慣れてそうだし。
恋愛経験が無いとは思えない。
だから、たぶん瞳が言うように、何らかの理由があるのだろう。