『絶食男子、解禁』
「この間は助けてくれて、本当にありがとう」
「……」
「ちゃんと御礼してなかったなと思って」
「それで、わざわざコレを?」
「そういうわけではないんだけど、これはたまたま…」
社内の噂は落ち着き始めた。
というのも、西野アナが『大学の後輩』だとコメントを出したからだ。
同じサークルで、同じ専攻という事実が決定打のようで、徐々にクールダウンしつつある。
「答えたくなかったら答えなくていいんだけど、もしかして、楢崎も私と似た境遇というか、過去に嫌なことがあって絶食になったの?」
「……」
「傷をなめ合うとか、励まし合うとかじゃないんだけど。……もし、楢崎に困ったことが起きた時は、遠慮なくヘルプサイン出していいからね?」
「……」
「私にできることなんてたかが知れてるだろうけど、楢崎とは、貸し借り無しの対等な関係でいたいから」
「……ん」
「楢崎に守って貰ったように、私も楢崎のこと、守ってあげたいしさ」
女って、『守って欲しい』『守って貰えるもの』だと主張する人が殆どなのに、鮎川はやっぱり少し違う。
過去の恋愛観でこうなったのか。
元々こういう価値観なのかは分からないが、こうしてプライベートな時間に一緒に過ごしていても全然苦にならない。
「元彼が二股かけてたとか、遊び目的だったとかだったら、どうしてた?」
「へ?」
「この間の話だと、付き合ってる時は浮気してなかったって言ってたから」
「……ん」
「鮎川が知らないだけで、二股どころか、三股四股とかしてたら、どう?」
「……たぶん、見て見ぬふりして受け流してたかな」
「え……」