『絶食男子、解禁』
「テレビ局の人に身辺整理するように言われたのは本当だけど、俺はお前を手放したくなかった。だけど、入社後数年は恋愛禁止だと先に念を押されて」
「……」
「誰にも渡したくなかった。つぐみが他の男の隣りにいるのを想像しただけで気が狂いそうだったし、それは今でも変わらない」
「ふざけたこと言わないでよッ!この六年、ずっと放っておいたじゃない!」
「だからっ、入社して数年は、恋愛は御法度だったんだよっ。六年かかってやっと地盤ができたんだ」
「そんなこと、私には関係ないっ!知らない男に抱かせようとした恋人なんて、人生の汚点でしかないっ!」
「……それは、本当に悪かったと思ってる。俺は……お前が、男に対して怖い思いしたら、二度と恋愛したいとは思わなくなるだろうと思って」
「はぁ?言ってる意味が全く分からないんだけど?」
「だから、俺以外の男に惚れさせないようにするために、わざとあの男の所に行かせたんだよ」
「………ッ?!!頭、どうかしてんじゃないの?私があの人に犯されてたら、どうするつもりだったの?」
「それは……信じてたというか。……何かあった時のために、護身用のキックボクシング習わせただろ?」
「ッ?!もしかして、それも計画してたってこと?」
頭がくらくらする。
目の前のこの男は、全てを自分に有利に働かせるために仕組む奴だとは分かっていたが、まさかまさか…。
痴漢対策にと言われ、一緒に習ったキックボクシングでさえ、企てていた計画の一部だっただなんて。
別れたくない、でも別れないとならない。
何年先になるか分からないから、待っててとも言えず。
だから、他の男に靡かないように、男嫌いになるように仕向けただなんて。
気持ち悪い。
彼の思い通りに私は男嫌いになって、誰とも恋愛しようとも思わなかった。
まんまとひっかかったというか、いい様に踊らされた。