『絶食男子、解禁』
「本気じゃないんだろ?」
「……?」
「今、付き合ってる男」
「……透には関係ない」
「関係あるよ」
「は?」
「俺は諦めてない。お前と約束しただろ。十年後も二十年後も一緒にいるって」
「六年前に別れたんだから、もう時効だよ!」
「籍入れてないんなら、俺にもチャンスがあるってことだろ。もう二度と裏切るような真似はしないから、やり直そう。頼む、俺とやり直してくれ」
「冗談は止めて。やり直すつもりもないし、こんな風に会うことも二度とない!もうこの手離して」
掴まれている手を振り解こうと、必死にもがく。
けれど、男性の力に勝てるわけもなく。
掴まれている部分に痛みが走るだけ。
「俺はお前と別れてから、誰とも付き合ってない」
「……私には関係ない。透が誰と付き合おうと、興味もない」
「付き合うどころか、一人も抱いてない。お前を傷付けた代償は、俺なりに操を立てることで償ってるつもりだ」
「……知らないわよっ、そんなこと。誰も頼んでないし、知りたくもない!」
一人も抱いてないだなんて、嘘でしょ。
モテるアナウンサーという周知の事実があるのに。
私より綺麗で可愛い子なんて、ごまんといるはず。
ってか、普通付き合った上で行為に及ぶのが一般的でしょ。
サラッと口にするから、彼の上手い口車にまた騙されるところだった。
「いい加減、離してっ、大声出すわよ?」
夜の公園とはいえ、デートスポットだから多少なりとも人はいる。
痴話喧嘩だと思われているのか、通りすがる人たちは足早に去ってしまう。
「結婚してくれ。この先の人生を全てをかけて、六年前の償いをするから」