『絶食男子、解禁』
*
GPSの位置情報を元に辿り着いたのは、豊洲ぐるり公園。
デートスポットらしく、あちこちにカップルがいる。
品川周辺の夜景が東京湾越しに見え、レインボーブリッジまで綺麗に見える場所。
あの男は、デートがしたかったのか?
タクシーを降りて、周辺を探す。
すると、駐車場の端で、声を荒げる男女を見つけた。
外灯からは距離があり、車のライトも消えているから顔は分かりづらい。
けれど、声の主が誰なのか、直ぐに分かった。
「俺は諦めてない。お前と約束しただろ。十年後も二十年後も一緒にいるって」
「六年前に別れたんだから、もう時効だよ!」
「籍入れてないんなら、俺にもチャンスがあるってことだろ。もう二度と裏切るような真似はしないから、やり直そう。頼む、俺とやり直してくれ」
「冗談は止めて。やり直すつもりもないし、こんな風に会うことも二度とない!もうこの手離して」
会話の途中からでも状況がすぐに呑み込める。
酷い仕打ちをしておきながら、今さらよりを戻したいって、イカれた野郎は、時間が経ってもイカれたままなんだな。
しかも、彼女にプロポーズ的なことまで口にしてただなんて。
「俺はお前と別れてから、誰とも付き合ってない」
「……私には関係ない。透が誰と付き合おうと、興味もない」
「付き合うどころか、一人も抱いてない。お前を傷付けた代償は、俺なりに操を立てることで償ってるつもりだ」
「……知らないわよっ、そんなこと。誰も頼んでないし、知りたくもない!」
鮎川の口から『透』という名前を耳にした。
西野が彼女のことを『つぐみ』と呼び捨てるように、彼女もあいつを『透』と呼び捨てにする仲。
俺の知らない二人の世界が確実存在している。
「いい加減、離してっ、大声出すわよ?」
左手首を掴まれている鮎川。
離れた位置からでも分かる、彼女がちゃんと抵抗しているのだと。
「結婚してくれ。この先の人生を全てをかけて、六年前の償いをするから」
「そこまでにしてくれますか」
GPSの位置情報を元に辿り着いたのは、豊洲ぐるり公園。
デートスポットらしく、あちこちにカップルがいる。
品川周辺の夜景が東京湾越しに見え、レインボーブリッジまで綺麗に見える場所。
あの男は、デートがしたかったのか?
タクシーを降りて、周辺を探す。
すると、駐車場の端で、声を荒げる男女を見つけた。
外灯からは距離があり、車のライトも消えているから顔は分かりづらい。
けれど、声の主が誰なのか、直ぐに分かった。
「俺は諦めてない。お前と約束しただろ。十年後も二十年後も一緒にいるって」
「六年前に別れたんだから、もう時効だよ!」
「籍入れてないんなら、俺にもチャンスがあるってことだろ。もう二度と裏切るような真似はしないから、やり直そう。頼む、俺とやり直してくれ」
「冗談は止めて。やり直すつもりもないし、こんな風に会うことも二度とない!もうこの手離して」
会話の途中からでも状況がすぐに呑み込める。
酷い仕打ちをしておきながら、今さらよりを戻したいって、イカれた野郎は、時間が経ってもイカれたままなんだな。
しかも、彼女にプロポーズ的なことまで口にしてただなんて。
「俺はお前と別れてから、誰とも付き合ってない」
「……私には関係ない。透が誰と付き合おうと、興味もない」
「付き合うどころか、一人も抱いてない。お前を傷付けた代償は、俺なりに操を立てることで償ってるつもりだ」
「……知らないわよっ、そんなこと。誰も頼んでないし、知りたくもない!」
鮎川の口から『透』という名前を耳にした。
西野が彼女のことを『つぐみ』と呼び捨てるように、彼女もあいつを『透』と呼び捨てにする仲。
俺の知らない二人の世界が確実存在している。
「いい加減、離してっ、大声出すわよ?」
左手首を掴まれている鮎川。
離れた位置からでも分かる、彼女がちゃんと抵抗しているのだと。
「結婚してくれ。この先の人生を全てをかけて、六年前の償いをするから」
「そこまでにしてくれますか」