『絶食男子、解禁』

自分で言ってて、恥ずかしくなる。
いやだって、本当のことだし。
あいつの方が、俺より鮎川のことを知ってるのが、なんか癪で。
彼氏は俺なのに。

もう自覚してる。
この一週間ちょっと会えないだけで、イライラしていた。
そして、今日。
久しぶりに顔を見て、実感した。
俺は鮎川が好きなんだと。

「この厚揚げ美味しい」
「どれ?」
「これ」
「あ~」
「え?」
「あ~っ」
「……」
「あ~ぁっ」

わざと大きな口を開けて、厚揚げが来るのを待つ。
突然の俺の行動に驚く鮎川。
だけど、好きだと自覚した以上、このままの関係でいたくない。

「もうっ、……はい」

口を開けて十数秒。
やっと口の中に厚揚げがやって来た。

「旨っ」
「ねぇ、美味しいよね。胡麻味噌とお出汁が効いてて。今度作ってみよう」

鮎川はきっといい奥さんになるだろうな。
美人だし、素直だし、料理の腕はプロ級だし。

「何?……顔に何かついてる?」
「俺の目からハート送ってんだけど」
「はぁ?」

可愛くて見惚れてただけだよ。
こういう冗談には慣れてないらしい。
視線を逸らした彼女は、ほんの少し頬を赤らめた。

「もう、最近変だよ?」
「そうか?」
「何だか、たっくんに刺激されて、オス化してる」
「……フフッ、当然だろ。あいつが俺のライバルらしいから」
「もうっ、子供相手に…」

俺は本気だって。
好きな女の裸を知ってるとか。
一緒に風呂に入って胸触るとか、マジで無理。

もう二度と。
他の男と、好きな女はシェアしたくねーんだよ。

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