『絶食男子、解禁』
「やっと終わったぁ~~」
朝九時にスタートした試験は十一時過ぎには終わり、大学のキャンパス内をのんびり眺めながら駅へと向かう。
お盆前とあって駅ビルのショップも活気があり、アパレルショップの店頭には、夏物のセール品と新作の秋物がたくさん並んでいる。
「自分へのご褒美でも買おうかな」
試験の合否はともかくとして、一年間頑張った自分へのご褒美。
最近買い物らしい買い物をしてなかったから、ちょっと贅沢したくなった。
「いらっしゃいませ~」
くるんと巻かれた長い睫毛が印象的な定員さんの笑顔に出迎えられ、とあるショップ内を見て廻る。
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「おかえり♪」
「っ……」
「ん?」
「それ、計算してんの?」
「え?」
「いや、何でもない。ただいま。これ、鮎川の好きなケーキ屋で買って来た」
「ありがと~」
数日前に夕飯を食べた際に、今日のことを楢崎には伝えておいた。
年に一度しかない税理士試験のために有給休暇届を出してあって、試験が昼前には終わると。
すると、『じゃあその日は、俺んちでご飯作って』と頼まれ、翌日に合鍵を預かった。
夕食メニューは彼のリクエストでキーマカレー。
付け合わせにサラダやスープの他にタンドリーチキンを用意した。
「うわっ、今日のも旨そっ」
「シャワー浴びて来る?汗掻いたんじゃない?」
「っ……ん、じゃあ、サッと浴びて来る」
「簡単なおつまみも作っとくね~」
彼は時間が早ければ、晩酌をする人。
だから、何かしら簡単なつまみを作っておけばいいみたい。
『乾きものでいい』とは言ってくれるけど、ナムルとか和え物くらいなら、どうってことない。