『絶食男子、解禁』
リビングでビールを傾けながら、海外のクラブサッカーの試合中継を観戦する。
『WING』が契約している選手が出場しているらしい。
「わぁっ、惜しい~ッ!!今の入りそうだったのに~」
サッカーのルールはよく分からないけれど、思わず見入ってしまう。
「痛っ…」
点が入りそうで入らない状態が続いていて、思わず興奮した私は、クッションに顔を埋めた瞬間、コンタクトがずれたようだ。
「どうした?」
「んっ……コンタクトがずれたっぽい」
「え」
左目に違和感があって、目を何度もしばたく。
「見せてみ」
「……左」
左肩に手を置いた彼は、ゆっくりと顔を近づけて来た。
「ゆっくり開けてみ?」
「……ん」
右目はウインクするみたいに閉じてて、コンタクトがずれてる裸眼の左目では、楢崎の顔はぼやけててよく見えない。
だけど、間近に彼の顔があるのは分かる。
頬にアルコールがかった息がかかり、思わずトクンと胸が跳ねた。
「あっ、……下の方にあるっぽい」
「下?」
下瞼を親指でそっと下げた彼が口にした。
「ありがと。あとは何とか自分で直せる」
下にずれた時の処置をし、何とか元の位置に戻すことができた。
まだちょっとゴロゴロ違和感があるけれど。
静かに瞼を閉じて、目の違和感が落ち着くのを待っていた、その時。
「んっ……え?」
ぐらりと体が傾き、背中に軽い衝撃を受けた。
思わず目を見開くと、覆い被さるようにして見下ろす楢崎が視界に映る。
「嫌なら、逃げて」
熱を帯びた彼の視線に囚われていると、いつの間にか彼の唇が重なった。