麗華様は悪役令嬢?いいえ、財閥御曹司の最愛です!
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『レイラ! 君との婚約を破棄する!』
私は今、スマホの画面を眺めながら、大変な衝撃を受けている。
「ええ!? レイラ様が、婚約破棄!?」
画面の中で婚約破棄を言い渡されたのは、レイラ・トレヴァー。金髪碧眼の美しい御令嬢だ。
彼女は、今話題の乙女ゲーム『その星に咲く運命の花』の登場人物。西洋風異世界の公爵令嬢で、王子の婚約者でもある。
彼女は容姿端麗、勉強も魔法も成績優秀。完璧な女性だ。態度は少々偉そうだが、間違ったことは言っていないし、スチルで出てくるドレスはセンスが良い。つまり、私の好きなキャラクターだったのだ。
その彼女が、突然婚約破棄を言い渡された。
「な、な、何で……? レイラ様は素晴らしい方なのに……!」
私、東堂麗華は、スマホをショックで落としてしまった。幸い就寝前に乙女ゲームをしていたので、スマホはベッドの上で悲しく光っている。
「レイラ様ほどの方でも、負けるというの……!」
私はただ呆然と、この展開に驚き動揺していた。それは、ゲーム内の『レイラ様』と私に共通点が多いからだ。完全に彼女に感情移入して応援していた、推しキャラだった。
彼女の名は『レイラ』、私は『麗華』で名前の響きが類似している。
似ているのは名前だけではない。見た目が派手な私と、何となくキャラがかぶるのだ。レイラ様ほどではないけれど、メリハリのある身体、気の強そうな見た目。そして間違ったことを指摘してしまう性格。
そんなつもりはないけれど、この人生で何度も言われた。『麗華様は偉そう』だと。
私は所謂、社長令嬢だ。東堂ホールディングスの頭取である父は、日頃から私にこう言った。
『正義を貫け。曲がったことは許すな。東堂の名に恥じぬ生き方をせよ』と。
派手で気の強そうな見た目に加えて、無駄に培った正義感。間違った事をしていたら正したくなるし、見て見ぬふりなんて出来ない性格。そんな私は説教くさいらしく、『偉そう』だと言われ続けてきた。
レイラ様だってそうだった。
貴族として間違った行いをした、平民育ちのユナに、ただ注意していただけだ。
『婚約者のいる殿方と、そのようにベタベタとくっつくべきではありませんわ』
『続けてダンスを踊る意味をご存知ないのかしら? 特別な関係でない殿方とは一回限りしか踊ってはいけませんわ』
『気安く話しかけないでちょうだい! 身分が上の者から話しかけるのがマナー。貴女は話しかけられるのを待つしかないのよ』
ゲーム世界の常識をただただ説いていただけなのに、レイラ様の何がいけなかったのだろう。何故、こんなことに……。
恐る恐るスマホを再び手に取り、物語の続きを見てみることにした。
突然婚約破棄を言い出した王子は、さらにレイラ様を追い込んでいく。
『レイラ、君はユナに対して散々嫌がらせを行ってきたそうじゃないか。身分が高いからってなんでも許される訳じゃない。君は王妃になる器ではないと判断した』
(はぁっ!? 何言ってるの? この王子様! 貴方の目は節穴か!)
憤りを隠せない私と同様に、レイラ様も怒り散らしている。
『わたくしは間違ったことはしておりません! 嫌がらせもしておりませんわ! 目に余る品位の無さを注意したまでのこと。何を根拠にそんなこと……!』
『やめてください! 私のせいで喧嘩をしないで!』
主人公ユナが涙を流し、それを王子が拭う。突然始まる二人のラブシーン。
いやいやいや。婚約者でもないのに、その距離感おかしいわ。
『ユナ……。私は、君が平民育ちだからと差別したりしない。君の素晴らしさはその笑顔だ。だから泣かないで?』
『殿下……』
そうしてあれよあれよとレイラ様は断罪され、国外追放となった。どんなにゲームを進めても、その後のレイラ様の状況は語られることはなかった。
(何よ……このゲーム……!)
私はレイラ様に似ている。
名前や容姿に性格、そして立派な婚約者がいることも一致している。
それだけではない。その婚約者に先日から急接近してきた女性。名前はなんと『結奈』である。
こんなに似ていると、どうしてもゲームと現実を重ね合わせてしまうのだ。
(もしかして、私も婚約破棄されるかもしれないの……!?)
東堂麗華、二十七歳。
その夜、私は乙女ゲームでピンチを悟った。
私は今、スマホの画面を眺めながら、大変な衝撃を受けている。
「ええ!? レイラ様が、婚約破棄!?」
画面の中で婚約破棄を言い渡されたのは、レイラ・トレヴァー。金髪碧眼の美しい御令嬢だ。
彼女は、今話題の乙女ゲーム『その星に咲く運命の花』の登場人物。西洋風異世界の公爵令嬢で、王子の婚約者でもある。
彼女は容姿端麗、勉強も魔法も成績優秀。完璧な女性だ。態度は少々偉そうだが、間違ったことは言っていないし、スチルで出てくるドレスはセンスが良い。つまり、私の好きなキャラクターだったのだ。
その彼女が、突然婚約破棄を言い渡された。
「な、な、何で……? レイラ様は素晴らしい方なのに……!」
私、東堂麗華は、スマホをショックで落としてしまった。幸い就寝前に乙女ゲームをしていたので、スマホはベッドの上で悲しく光っている。
「レイラ様ほどの方でも、負けるというの……!」
私はただ呆然と、この展開に驚き動揺していた。それは、ゲーム内の『レイラ様』と私に共通点が多いからだ。完全に彼女に感情移入して応援していた、推しキャラだった。
彼女の名は『レイラ』、私は『麗華』で名前の響きが類似している。
似ているのは名前だけではない。見た目が派手な私と、何となくキャラがかぶるのだ。レイラ様ほどではないけれど、メリハリのある身体、気の強そうな見た目。そして間違ったことを指摘してしまう性格。
そんなつもりはないけれど、この人生で何度も言われた。『麗華様は偉そう』だと。
私は所謂、社長令嬢だ。東堂ホールディングスの頭取である父は、日頃から私にこう言った。
『正義を貫け。曲がったことは許すな。東堂の名に恥じぬ生き方をせよ』と。
派手で気の強そうな見た目に加えて、無駄に培った正義感。間違った事をしていたら正したくなるし、見て見ぬふりなんて出来ない性格。そんな私は説教くさいらしく、『偉そう』だと言われ続けてきた。
レイラ様だってそうだった。
貴族として間違った行いをした、平民育ちのユナに、ただ注意していただけだ。
『婚約者のいる殿方と、そのようにベタベタとくっつくべきではありませんわ』
『続けてダンスを踊る意味をご存知ないのかしら? 特別な関係でない殿方とは一回限りしか踊ってはいけませんわ』
『気安く話しかけないでちょうだい! 身分が上の者から話しかけるのがマナー。貴女は話しかけられるのを待つしかないのよ』
ゲーム世界の常識をただただ説いていただけなのに、レイラ様の何がいけなかったのだろう。何故、こんなことに……。
恐る恐るスマホを再び手に取り、物語の続きを見てみることにした。
突然婚約破棄を言い出した王子は、さらにレイラ様を追い込んでいく。
『レイラ、君はユナに対して散々嫌がらせを行ってきたそうじゃないか。身分が高いからってなんでも許される訳じゃない。君は王妃になる器ではないと判断した』
(はぁっ!? 何言ってるの? この王子様! 貴方の目は節穴か!)
憤りを隠せない私と同様に、レイラ様も怒り散らしている。
『わたくしは間違ったことはしておりません! 嫌がらせもしておりませんわ! 目に余る品位の無さを注意したまでのこと。何を根拠にそんなこと……!』
『やめてください! 私のせいで喧嘩をしないで!』
主人公ユナが涙を流し、それを王子が拭う。突然始まる二人のラブシーン。
いやいやいや。婚約者でもないのに、その距離感おかしいわ。
『ユナ……。私は、君が平民育ちだからと差別したりしない。君の素晴らしさはその笑顔だ。だから泣かないで?』
『殿下……』
そうしてあれよあれよとレイラ様は断罪され、国外追放となった。どんなにゲームを進めても、その後のレイラ様の状況は語られることはなかった。
(何よ……このゲーム……!)
私はレイラ様に似ている。
名前や容姿に性格、そして立派な婚約者がいることも一致している。
それだけではない。その婚約者に先日から急接近してきた女性。名前はなんと『結奈』である。
こんなに似ていると、どうしてもゲームと現実を重ね合わせてしまうのだ。
(もしかして、私も婚約破棄されるかもしれないの……!?)
東堂麗華、二十七歳。
その夜、私は乙女ゲームでピンチを悟った。
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