バスの中、総長様から逃げられない
ワイルドに波打つ、艶のある黒髪。
全身から醸し出すオーラは、高2とは思えないほど大人っぽい。
『東条くんって、国宝級にかっこいいよね~』
『睨まれちゃうから声はかけられないけど、遠くから見てるだけで心臓がやられるよ~』
『女嫌いでもいい。冷酷暴君王子様に、一度でいいから睨まれたい。目が合っただけで、痺れちゃうんだろうなぁ~』
年上年下なんて関係ない。
東条くんは学園中の女子に、大大大人気なんです。
そんな東条くんが今、私の隣に座っているこの状況。
バスにはクラスメイト全員が乗り込み完了で、あとは先生が乗り込んだら出発って感じなんだけど……
「なんで七瀬さんの隣に、東条くんが座ってるの?」
「このバスが空港に着くまで、ぼっちの七瀬さんが総長を独占するってこと?」
「酷くない? 女子は総長様に近づくなっていう、暗黙の了解があるのに~」
耳に入り込んでくるヒソヒソ声を聞く限り、私が総長を独り占めしていると思われているようです。