バスの中、総長様から逃げられない
女子達の顔色を確認するのが、怖すぎる私。
一番前の窓際に座ったまま、得体のしれない恐怖に襲われ、2本のおさげがフルフルと
揺れてしまう。
右の席に座っている東条くんと目が合うのも気まずくて、私は窓の外に視線を逃がした。
園庭のイチョウが見ごろだなぁ。
葉が黄金に色づいていて……
秋の優しい風でユラユラ揺れて……いて……って。
ん?
揺れる?
そっか、そう言うことか。
私は今まで、何を勘違いしていたんだろう。
東条くんは、車酔いしやすい体質なんだ!
だから望月君に頼んで、場所を代わってもらったに違いない。
酔いやすいなら、通路側より窓際の方がいいよね?
席を交換する?って、聞いてみようかな。
でもでも、私なんかが話しかけて大丈夫?
不快すぎて気分を害して、余計に吐き気をもよおしちゃうかも?
東条君は女嫌いで有名な人だし。