君に甘やかされて溺れたい。
藍良くんが見せてくれたのは、ピンク色の消しゴムだった。
あっ、それは……
もしかして、あの時の?
高校入試の時、隣に座っていた男の子がペンケースをガサガサして焦っていた。
どうやら消しゴムを忘れてしまったらしい。
私は予備の消しゴムを持っていた。
でもピンクだし、男の子は嫌かな…と思ったけど、思い切って声をかけた。
「これ、よかったら使ってください」
「いいんですか?」
「もう一つあるのでっ」
言ってからもう一つの白い消しゴムを貸せばよかった……と思った。
でもピンクはまだ使ってない綺麗なやつだから、こっちの方がいいよね。
「こんなにかわいいの、ありがとう」
男の子はすごく嬉しそうに笑ってくれたので、安心した。
まさかあの時の子が藍良くんだったなんて。
「終わってからお礼言いたかったのに、すぐ帰っちゃうから」
「あ、あの時雨で親が迎えに来てくれることになってたからっ」
「ずっとちゃんとお礼言いたかったんだ。あの時はありがとう」
「ううん、こちらこそ」
「そしたら同じクラスになれて運命かもしれないって思ったんだ」