まるごと大好き!
 私はホワイトボードを動かして、会議でいつも置いておく場所に設置した。そこに、マーカーで棒人間を2人分かいた。

「ここに、付き合ってる……うーん、夫婦でもいいか……とにかく、お互いが好きで一緒にいるとするでしょ」

 お互いに向け矢印をかいて、線の上にハートを飛ばしてみる。かなえはなにも言わず、私の説明を聞いてくれていた。

「で、こう……お互い、仕事とか目標とか、やりたいことややらなきゃいけないことがあって、一緒にいない時間のほうが増えちゃった」

 クリーナーで矢印もハートも消してしまう。それからもう1人、棒人間を増やした。

「そしたら片方は、別の人を好きになって……もとの相手のことはイヤになっちゃった」

 新しく増やした棒人間との間に、大きなハートをかいた。もとの相手との間には、カミナリのような線を引く。

「物理的な距離ができるとね、精神的な距離もできちゃうの」
「それは……お互いに、こまめに連絡しあっていれば……」

 かなえは悩みながら反論してきた。私もそう思っていた。お互いに甘えて、連絡をおろそかにしなければ大丈夫なんじゃないかって。
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