まるごと大好き!
「元からだよ」

 鐘石の顔にはもう怒りはなくて、呆れた口調でまたもやさっくりと切り捨てた。強い。

「いい加減、自分で勉強して」
「静波に教わったほうがわかりやすいんだよ」

 これはわかる。鐘石は教えるのが上手い。おれと2人で「もうどこがわからないかわからない」の半ベソ状態だったのを、小学生のときにつまづいたところから、教科書まで用意して丁寧に説明してくれた。
 
「ずーっとあんたの面倒みれるわけじゃないんだよ」
「知ってる。高校卒業するまででいいから」
「いいからって何? いいからって」
「いえ、高校卒業したら絶対に迷惑はおかけしませんので」

 鐘石が暗黒オーラを漂わせると、木城はとたんに敬語をすらすらと話した。わかる。美人ほど怒ると異常な迫力があるよな。
 最初は某猫型ロボットにすがる永遠のダメダメ少年のようだったけど、これは鬼嫁の尻にしかれる旦那だ。あいつら結婚しても家でこういう状況になってそうだな。知らんけど。

「……今週の土曜、時間取れる?」
「静波……!」
「勘違いしないでよ? 私にとってもいい復習になるし、それだけだから」

 木城の顔がパァッと輝いた。鐘石はそっぽを向いているけど、心なしか頬が赤い。うーん、これは典型的なツンデレ。「べっ、別にアンタのためじゃないんだからねっ」をこの歳で見られるとは思っていなかった。長生きはするもんだな。

「静波、マジで愛してる……!」
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