まるごと大好き!
 ……じゃない。まだわかってないことがある。
 不良たちに芽衣里ちゃんの個人情報を流したのはだれだ?

「〝エシュ〟だ」
「えしゅ?」

 廻の、いつにない真面目な顔。
 その顔を見て、俺も自然と背筋を伸ばした。

「E……S……H……U……って書く」

 廻はノートの切れはしにつづりを書いた。ESHU……エシュか、英語っぽいけど静波ならわかるかな。

「それで、このエシュっていうのは?」

 人の名前なのか、組織とか団体の名前なのか、それさえわからない。
 廻は難しい顔をして、首を横に振った。

「俺にもわかんねぇ……。わかるのは、こいつがたくさんの情報を知ってて、雪実さんが追っかけてるってだけだ」

 俺は廻の横顔を見た。根本が黒くなっているプリン頭で、前髪は赤いボンボンがついてるヘアゴムで雑にくくられている。
 ……ふざけた見た目だと思う。
 でも、くっきりした二重の瞳には力強さがある。
 いっつもそういう顔をしてれば、女子にモテるのに。
 だけど、それじゃダメなんだよな。

「お前、あの刑事さんが好きなんだな」
「ああ、守りたい」
 そう言ってフッと笑った廻の姿を、俺はずっと忘れないだろう。
 ……俺も、他の誰でもない。
 静波を、守りたい。
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