まるごと大好き!
 あれで、もし静波があいつらに傷つけられていたらと思うと……いや想像もしたくない。
 わかりやすく静波はむくれた。俺の恐怖を知らないんだから、当然といえば当然だ。

「だれもケガしないですんだんだし、お礼くらい言ったってくれたっていいじゃない……」

 俺はムスッとした静波をきつく抱きしめた。
 あわてて離れようとする静波を、俺は耳元に唇をよせて止める。
 トマトみたく真っ赤になってる耳たぶに、俺はため息と一緒に小さな声でつぶやいた。

「無事でよかった」

 静波の身体が震えるのがわかった。

「……大げさだよ」

 蚊の鳴くような声で、静波がそれだけ言った。
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