まるごと大好き!
 俺を離そうと胸や腹を押していた手はだらりと下がって、もう抵抗はしてこない。
 俺の腕に、すっぽりと収まって大人しくしていた。

「静波が傷つけられたら……俺は自分を一生許せない」

 セミロングの髪からは、シャンプーのいい匂いがする。
 肩も、背中も、腕も……どこもかしこも柔らかくて、俺はますます怖くなった。
 こんなんじゃ、簡単に壊れてしまうんじゃないかって思ってしまう。
 静波が弱いって意味じゃない。むしろそこら辺の男よりもずっと強いと思う。
 小学校のときから正義感が強くて、曲がったことが嫌いで、上級生にも堂々と意見するやつだ。
 中学に上がってからは、勉強ではずっと学年1位をキープして、生徒会長にもなって、当然のように推薦を受けて、高校には1番の成績で入学して。
 俺は、高校なんて行く気はなかった。中学を卒業したら働こうとさえ思ってたけど、おばさんに「高校は行っておきなさい」と言われて、それなら静波と同じとこに行きたくて、どうにかギリギリで入学できた。
< 43 / 82 >

この作品をシェア

pagetop