まるごと大好き!
「ケガしたお婆さんを助けたんです」
「お婆さん?」
「はい。家族が迎えにくるまで、静波ちゃんが一緒についてるからって」
「そう……。そのお婆さん、どんな人だった? 服装とか」
「ええと、上品そうな感じの人でした。服は……」

 私は覚えてるだけのことを全て話した。クリーム色のセーターに、くすんだオレンジ色のロングスカートを着てたこと。足をケガしてたこと。それから……。

「それから……犬を連れてました。小型犬」
「犬?」

 先生がハッとした顔になった。

「その犬、リリーって名前じゃない?」
「え! あ、そうです!」

 たしかにあのお婆さんは「リリー」と呼んで追いかけてた。でもどうして先生が知ってるの?
 混乱する私をよそに、三津野先生は「ありがとう、もう大丈夫」と無理に笑ってみせた。
 ……これ以上はもう聞けないだろう。
 私はどこかに電話をかけている三津野先生を横目に、担任の先生から日誌をもらって自分の教室までとぼとぼ歩いた。こういうときに、静波ちゃんと同じクラスじゃないって不安だ。
 静波ちゃんのことを考えながら、席に座って日誌に今日の日付けを書いた。
< 69 / 82 >

この作品をシェア

pagetop