まるごと大好き!
『別れるって、どうしたんだよ、いきなり』
『うあんに……不安になったの』

 今にも泣きだしそうな声に、こっちの気持ちがザワザワした。
 同時に、舌足らずな話し方だなと首を傾げた。気持ちがコントロールできない子どものような……?
 静波ちゃんが絶対にしない話し方なのはわかる。

『不安になった? 俺、なにかした?』
『違うの……私が勝手に考えちゃって……うるしい、苦しいの』

 静波ちゃんは木城くんの返事を待たずに話しだす。

『へいご……英語、もっと教えてあげたかったんだけど、ごめん……』
『いいよそんなん……なぁ、会って話したい』
『ごめん……私、結婚、するの』
『りしゃに……医者になる夢、は………あきら、める』
『え?』

 え?
 私たちが木城くんと同じ反応をして、一瞬なにも考えられなくなった。

『そういうことだから、もう連絡しないでくれ』

 その隙を突くように、突然、男の人の声がして電話は切れてしまった。
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