まるごと大好き!
「……いやこれ、無理矢理言わされてんじゃん」

 真岡くんがみんなの気持ちを代弁してくれた。

「朝かかってきた電話でも言われたの。静波は結婚するので退学するって」

 三津野先生はこめかみを抑えながら言った。
 聞けば、押し問答をしてるときに犬の鳴き声が聞こえて、相手が「リリー、静かにして!」と怒鳴ったと言う。
 そっか、それで先生は犬の名前がわかったんだ。

「せんせー、静波のお母さんは連絡ついたの?」
「ええ、すぐに来るって」
「総合病院からだと……15分てとこか」

 静波ちゃんのママは医者で、近くの総合病院に勤めてる。
 すっごく忙しい人で、病院で寝泊まりすることもあるんだって静波ちゃんは言ってた。
 そのときの顔は寂しそうじゃなくて、むしろ誇らしいと言いたげな、キラキラした顔だった。

「警察に連絡は?」

 真岡くんが先生に問いかける声で、意識は現実に戻された。

「目撃した方がいないか調べてみます、とは言ってたんだけど……」
「期待はできねぇか」

 真岡くんは「雪実さんに連絡してみるわ」とスマホをいじり始めた。
 木城くんは腕を組んで、なにやらブツブツつぶやいていた。
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