まるごと大好き!
「君嶋!?」

 ギョッとした木城くんにはかまわず、私はカウンターに置いてあったメモに飛びついた。
 ボールペンを借りて、字を書きこんでいく。
 静波ちゃんが言い間違えたところの、正しい言葉を抜きだして、その先頭だけを取りだせば。

「ふくえい……?」
「君嶋さん、なにかわかったの?」
「〝ふくえい〟って場所に静波ちゃんいます! 暗号で私たちに教えてくれたんです!」

 私は興奮して三津野先生の手を握りブンブン振った。
 先生は戸惑いながらも笑顔でうなずく。

「木城くん、この電話がかかってきたのって何時?」
「8時半……くらいだ」
「私が静波ちゃんと別れたのが8時くらいだから……」
「え、なに? どうした?」

 私と木城くんの顔を見比べてる真岡くんに、私は「ここから車で30分くらいで行ける“ふくえい”という場所を調べてほしい」とお願いした。

「んー、けっこうあるなぁ」
「そっか……」

 これで静波ちゃんを助けられる!
 そう思ってた私は、ガックリと肩を落とした。まだヒントが足りなかったか……。

「廻、その中で海に近い場所は?」

 木城くんがいきなり聞いてきて、私はハッと顔をあげた。
 もしかして、なにか気づいた?

「波の音が聞こえた気がしたんだ」
「波の音……!」
「1件あるぞ!」

 真岡くんは私たちの前にスマホをかざした。

 〝料亭 福栄〟
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