まるごと大好き!
 私は今も学校に通って、昂志と付き合ってる。
 そんな当たり前の日常が、今は幸せでしかたない。

「静波はさ、今も不安?」
「幸せで不安かな……」

 いつか壊れてしまうんじゃないかと、心のどこかでいつも思ってる。
 結局、私は臆病者だ。今も昔も。
 それでも事件があった日の翌日に、過去にあったトラウマを昂志に全部吐きだした。
 昂志はただ、手を握っていてくれた。

「静波」
「うん」
「俺は静波の、努力家なとこが好き。正義感の強いとこが好き。責任感の強いとこが好き。優しくしてくれるとこが好き。照れると顔を真っ赤にするとこが好き。それから──」
「へ? あの……」
「素直じゃないとこも好き。俺を心配してくれるとこも好き。俺に勉強教えてくれるとこも──」
「いやなに、どうしたの」

 昂志は真剣な顔で、私に告白したときの言葉を繰り返した。どういうつもりなのかわからなくて、私は言葉をさえぎってしまう。

「俺の言葉を信じてよ」
「え?」
「静波を傷つける言葉じゃなくて、俺が静波を好きな気持ちを信じて」
「……」

 それは、どんな難問より大変だ。
 もしかしたら、一生かかっても無理かもしれない。
 それでも。

「昂志と一緒なら、信じるのがんばってみる」
「うん、すぐじゃなくていいから」

 気の抜けたように笑う昂志を見て、今はこの幸せな時間だけ考えていようと、そう思った。

──完──
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