危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 仕事を終え、片桐の送迎で帰宅するとちょうど門の前で達也が待っていた。横目でちらりと片桐を見て言う。
 
「すみれ。二人で話がしたいんだ」
 
 親を巻き込む前にもう一度はっきり本人に別れを告げたほうがいいかもしれない。どちらにせよ、覚悟が必要だ。

「入って」

 自分の部屋に通す。
 なにも言わない片桐の視線を背に感じた。

「これ、返します」

 引き出しから婚約指輪の入った箱を取り出し、達也に渡す。オーダーメイドで作った2カラットのダイアモンドがついた特注品だ。達也は受け取らなかった。
 
「どうしても別れたいってことか。お父さんには言ったの?」

 優しい笑みを浮かべて聞いてくる。会話の内容に合わない違和感があった。
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